弁護士フィーとコンサルフィー

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最近は休日も家で作業・勉強をしていることが多く、思いついた雑念を吐き出すためにtwitterを使っています。そんな中、昨日投稿した

というツイートに対して、思いの外「書いてくれ」とのリアクションをいただけたので、弁護士フィーとコンサルフィーについて少し記事を書いてみました。

0.前提

前捌きをしておかないと、いくらでも突っ込みどころが出てくるので少し言い訳から入ります。

なお「相対的にフィーが高いコンサル」と「相対的にフィーが安い弁護士」を比較する手前、やや弁護士業務を批判的に検討することになりますが、私自身弁護士という仕事に誇りを持っていますし両者の価値に高低をつけるものでもありません。

ここで言うコンサルとは

定義の仕方は人それぞれかなと思いますが、私は以下のように整理しています。

  • 戦略系コンサル:マッキンゼー、BCG 他
  • 総合系コンサル:Deloitte、PwC 他
  • IT系コンサル:Accenture、アビーム 他
  • その他(専門/個人):ヘイ、IDEO 他

戦略系は「戦略以外コンサルじゃない」と言うし、総合系は「戦略に加えて実行支援までしなければ絵に描いた餅だ」と言い、IT系は「ITを起点にしない戦略は最早ありえない」と言います。なお、近年では各分類の差異も薄まってきていると言われており、背景には以下のような事情があると理解しています。

  • 戦略系出身で、機会を求めて総合系・IT系に移籍するパートナーが継続的に一定数存在する
  • 総合系・IT系が他領域の人材を吸収して、戦略/デジタル/デザイン特化部門を新設している
  • 戦略系も実行支援分野に手を出し始めている

ここで言う弁護士とは

コンサルと比較する手前、(規模はともかく)主にto Bでの仕事を想定します。

to Bに絞ったとて弁護士業務も多様であり、個別事案の特性を考慮しだすと何も言えなくなることから、ある程度乱暴にえいやで検討していますがお許し下さい。

ここで言うフィー(価格設定)とは

価格設定はマーケティングの4Pの一つであり、まさに戦略を元に決定すべき部分です。戦略に基づく以上あまり一般論には馴染まない部分ではあることを自覚していますが、あえて検討してみようと言うのが今回の記事です。

なおコンサルの場合、フィーは一般的に

  1. 戦略
  2. 専門
  3. 総合
  4. IT

の順に高いと言われていますが、総合系やIT系は社内に戦略部門や専門部門を持っていることが多いため案件によって異なります。これ以上具体的な金額の話は憚られるので、詳細はググってみてください。意外と落ちています。

1.検討テーマ

【検討テーマ1】
弁護士もコンサル並にフィーをあげるべきか

【検討テーマ2】
現時点でフィーに差異が生じている原因は何か

2.結論

【検討テーマ1】
個人の判断だと思いますが、業界としては上げていけると良いのかなと思います。
業界としての魅力や多様性が向上すれば良いし、また弁護士(会)起点での「弁護士たるものこうあるべき」みたいな努力ではなく、クライアントの期待起点での「この金額であればこうあって欲しい」に応える努力が増えればいいなとも思います。

【検討テーマ2】
今の所、メインは下記の「仮説4」辺りかな…と言う印象です。ただ原因は複合的かもしれないですね。

3.検討の経緯

以下の4仮説を検討してみました。

仮説1

歴史的経緯の違い

弁護士は十数年前まで報酬額が一律で決められていました。かかる制限が撤廃された現在においても、旧報酬規定を参考にすることがよくあるようです。このような歴史的経緯から、ある種の半強制的な相場が形成されてしまい価格を上げにくい状況があるのかもしれません。

他方、コンサルの場合(歴史的経緯とまで言えるかはともかく)価格帯がファームの実力を表すと考えている節があり、常にフィーをあげる努力・上げたフィーに見合うだけの「バリュー」を出す努力を促す文化がある気がします。

仮説2

契約時の「確からしさ」の違い

コンサルはプロジェクトを単位として活動し、プロジェクトの管理をしながら仕事を進めます。営業も当然、プロジェクトの提案という形でなされます。これは、結果が不確実なもので商売をすることから、プロジェクトというプロセスで合意をすることで一定の「確からしさ」を担保しようとしているのだと理解しています。

他方、弁護士の場合はより厳格に、結果を請け負ってはならないことが規定されています。

弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。(弁護士職務基本規程 29条2項)

もっとも、結果を約束することを禁止される状況にありながら、特段プロセスを合意したりプロジェクト管理をすることは多くはなく、個人の経歴や実績・事務所のブランド・信頼関係等でふわっと結果(に対する期待)に合意していることも多い気がしています。「先生を信頼しています」「先生で負けるなら悔いはないです」的なイメージです。全体の想定スケジュールを引いたり、定期報告をしたりといったことも、されている所とされていない所とありますよね。

サービスに対する価格というのは

実現可能価値/回避可能損失(a) × 実現/回避可能性(b)

で付くものだと思うので、(b)があやふやであったり主観に依存したものになって「確からしさ」が低下してくると、その結果として価格は低下すると思います。

仮説3

クライアント側の意識の違い

懲罰的損害賠償がない現状では、弁護士がもたらすことができるのはマイナスからの回復が主であって、クライアント側は「当然受け取るべきもの」との意識が強いのかも知れません。

クライアントが被告側の場合はなおの事ですが、原告側の場合でも「本来、道義的には受け取れて当然のもの」という意識がある気がします。「受け取れて当然のものを受け取る手助けに対して対価を払いたくない」という気持ちは、一般論としては理解できる所です。

仮説4

事件の解決か、課題の解決かの違い

もう少し本質的な仮説を立てたいなと思って考えたのがこれです。弁護士の場合、事件(≒問題)の解決に主眼があり

  • 問題
  • 原因
  • 課題
  • アクションプラン

みたいな深掘りをしにくい・していないからではないかと考えました。

クライアントの背景事情を踏まえて今回問題が起きた原因を特定し、原因を踏まえて適切に課題を設定した上で、この先取り組むべき内容をロードマップに落としてアクションプランを描いてあげられればより高い価格設定にも合理性が出るのかも知れません。もし弁護士の皆さんが「そこまでやっていられない」「それは自分の仕事ではない」と思ったとすれば、この仮説4が当たりの可能性が高まりますかね。

———————————————————————

以上になります。

今回は結論というより自分の思考過程を公開してみた感じなので、ご批判いただいて自分の理解がより深まれば良いかなと思っています。それでは良い日曜日を。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。